ちさとちゃんのフィッティング
小学校4年生のちさとちゃん
お客様を紹介します。
お父さんが強度近視で当店のお客様のお嬢さんのちさとちゃん。小学校4年生です。
今回、初めてのメガネの作製でして、学校で席が後ろになったら、黒板の字が見え難くなったとの事でご来店。
裸眼視力を測ったら、両目共に0.3程度。こりゃ大変。早速メガネを作りましょう!と云う事になりました。
では、いつもの様に所見から
1.クリングスパッドの形が良くない。 小判型は良いとしても、ネジ穴のある凸部分がパッドの上下中心にあるので、
凸部分がやや上部にあるタイプに交換する
2.パッドの位置は、まあまあだが、もう少し下げるとさらに安定して具合が良くなりそう。
3.頂点間距離が長いので10mm程度まで近づける。
4.前傾角が0度の様に、ほとんど付いていないので、5~10度ぐらいは角度を付ける。
5.テンプル幅、形状が全く合っていない。
6.モダンがゆるゆるなので、屈折点を作り、落ち込む角度を、耳介の付け根にトレースする。
以上の点を特に考慮しながら、フィッティングしていきましょう。
テンプル形状の調整
未調整で、フレームを試着してみると、テンプルの形状が抱え込むように、丸まっていて、顔の側面とテンプルの接触は、
耳介の裏側のみになってしまいます。
(耳介の裏側のみの接地だと、掛けていてストレスになります)
テンプル形状の調整の手さばき
この様な場合は、元の智の開き角を狭くしてから、テンプルの形状を抱え込む形から、
直線的にして、テンプルの顔へのファーストタッチは、もみ上げあたりになるようにしましょう。
形状の調整の手さばきは、両親指を作用点に、残りの指で裏返すようにして調整します。
これで直線的になりました。子供メガネの限らず、テンプル形状が無意味に抱え込んでいるフレームがありますが、顔の側面に形にトレースするように、調整しましょう
クリングスのフィッティング
付属のクリングスパッドの形状は、小判型でネジ穴の凸部分がパッドの中央にあるので、パッド位置を下げることを考えると不利。最初から凸の位置がパッドの上部にあったほうが効率が良いでしょう。
大きさを比べてみる
パッドの大きさは、フレームサイズを考えれば、それほどおかしくはありませんが、ネジ穴の位置が悪いので、交換しましょう。
クリングスパッド位置の調整
この子供用のフレームは、パッドの位置が一般的なフレームよりも下に付いており、それほど悪くありませんが、微調整するとさらに掛け具合がよくなります。
白い○あたりが、クリングスパッドのフィッティングポイントになります。
向かって右を調整しましたが、未調整の左側のクリングス足の伸びていて、頂点間距離が長いので、調整した方が、浮いてしまっています。
さらに、向かって右のクリングスを調整すると、頂点間距離が理想の10mm程度になり、
両方のパッドもフィッティングポイントに着地して安定します。
クリングス調整の手さばき
クリングス足は、上ロー付けタイプのスネークになります。
矢印の部分を「水平U」と呼んでいます。見た目がアルファベットの「U」の字に見えるでしょう。
ヤットコはニシムラのNo.190です。水平Uの両方の直線部分を一緒に掴みます。
今回の調整量は2mm程度下に下げることと、頂点間距離を短くすることを頭に入れながら、パッド下部が対のレンズ方向に来るように、ぐるり!と回します。
変な形になっていますが、そのままニシムラNo.395などのパッドを掴むヤットコに持ち替えて、パッドを挟み、やや下に引っ張りながら、今度は逆方向にぐるり!と回します。
回し終わる頃には、さらに下に引っ張りながら、形を整えます。頂点間距離、パッドの左右の幅なども考慮しながら引っ張る力を加減します。
前傾角の調整
調整前の前傾角は2~3度程度でしょう。全く物足りません。
遠用(常用)のメガネは5~10度程度が理想です。
フレーム智の形状とヤットコの選択
調整に当たって、智の形状は、ごく一般的なロー付けタイプ。
但し、子供用フレームなので、しっかり頑丈にロー付けされています。この手の調整は、右手はいつものニシムラNo.1530で、左手は、ニシムラNo.766が、丁度良さそうです。
前傾角調整の手さばき
右側の調整
右智の調整は、フレームを表にしておこないます。右手のNo.766は、必ずフレーム上部から差し込む事が原則で、下から差し込むと、No.766の金属部分がフレームに触ってしまい、調整中の傷の原因になります。
左側の調整
左の智の調整は、ヤットコを持つ手は右の調整と同じです。違うのは、フレームを裏返しにする事です。
こうする事に拠って、各手のヤットコを持ち替えずに、調整することができます。
これで、6~7度程度かと思います。フィッティング前の角度とは違って、具合が良さそうです。
モダンの調整
耳介の付け根とモダンの間のスキマが1cm近くあいており、これはゆるゆるです。具合が悪いのがすぐに解ります。
耳介の付け根の頂点に屈折点を作り、そこからは、耳介の付け根の形状をトレースしながら、落ち込む角度と抱え込む角度を調整していきましょう。
モダン形状
調整前の形状
フィッティング前は、屈折点がハッキリしておらず、ずるずるの状態。これでは、ズリズリのメガネになってしまうでしょう。
モダン調整の手さばき
右モダン
右モダンは、両方の親指を作用点にしながら、右手の人差し指第一関節爪の生え際の外側を支点にして、屈折点を作っていきます。
左モダン
左モダンは。両手の人差し指を作用点にしながら、右手親指の第一関節爪の生え際の外側を支点にして、屈折点を作っていきます。
調整後の形状
屈折点(カクッと)を耳介の付け根の頂点に合わせて作り、落ち込む角度をトレースすることによって、ぴたっとしたモダン調整ができるのです。
これは、気持ちいいぐらいにピタリとハマッています。この様に、耳介の付け根の形状そのままに、モダンの形状をトレースしていきましょう。
原理は簡単なんですが、見る目を養い見極めるのが、少し難しいですね。
仕上げ
小学校4年生って、きっと毎日が楽しいでしょうね。うらやましい・・・・
ちさとちゃん、使いながら気になるところとかがありましたら、いつでもお越し下さい。
いきなりだったけど、モデルを引き受けてくれてありがとうございました。